里湖モク採り物語 50年前の水面下の世界 (さとうみ・里海)


里湖(さとうみ)モク採り物語

平塚 純一・山室 真澄・石飛 裕:著

A5判/144ページ/定価 本体1,700円+税
ISBN4-915342-48-4
(13桁:ISBN978-4-915342-48-6)

日本人の生活圏の中には周囲の二次林を管理し,生活の一部とする「里山」という文化がある。しかし,この文化 も生活の向上とともに姿を消しつつある。湖の周辺に住み,湖と生活をともにしてきた人々も,同じように湖を「里湖(さとうみ)」として管理しながら,生活 の一部に取り入れていた。現在は多くの湖沼で生活排水や化学肥料が流入し,その姿を変えてしまったが,50年前には水面下に植物が生い茂り,そこを生活の 場として動物が豊富に生育していた。とくに「モク採り」とよばれる沈水植物の収穫は肥料としての利用以上に,湖の生態系を管理する役割もはたしていた。
近年,自然再生への市民の関心は高い。身近なところにある木々にはじまり,里山,海浜,そして湖沼。しかし実際にどのような,いつごろの自然を再生すればよいのだろうか。
本書は,そんな疑問から端を発し,全国の湖で「モク採り」に関わってきた人々を対象に実際に聞き取り調査をおこない,多くの地元の関係資料を参照しながら,50年前の人々の暮らしぶりや水面下の世界を描いたものである。
●目次●

1.湖沼における自然再生と50年前の水面下の世界
  • なぜ50年前の水面下の世界なのか?
  • 日本の湖沼環境の現在
2.中海−50年前の水面下の世界と人々の暮らし−
  • 肥料藻の種類,採集場所,採集方法
  • 肥料藻採集権と操業形態
  • 加工と販売,利用法
  • 大根島における肥料藻の重要性と漁場争い
  • 中海における肥料藻の採集量
3.宍道湖−50年前の水面下の世界と人々の暮らし−
  • 調査方法
  • 宍道湖における水草の種類と繁茂状況
  • 宍道湖における水草および水草帯の利用状況
4.山陰地方の小規模な潟湖−50年前の水面下の世界と人々の暮らし−
  • 湖山池
  • 東郷湖
  • 神西湖
5.全国の湖沼−50年前の水面下の世界と人々の暮らし−
  • 東北地方(八郎潟/尾駮沼)
  • 関東地方(涸沼/霞ヶ浦/印旛沼/手賀沼)
  • 中部地方(浜名湖/諏訪湖)
  • 近畿地方(琵琶湖)
  • 北陸地方(河北潟/三方五湖)
6.沈水植物が繁茂していた頃の湖沼生態系と物質循環
  • 「里湖」文化としての肥料藻採集
  • 沈水植物が繁茂していた頃の湖沼における栄養塩循環
  • 湖沼生態系における沈水植物群落の機能
  • 沈水植物群落の衰退とその原因
  • 沈水植物群落消滅が湖沼生態系に与えた影響
7.自然再生事業と「里湖」文化の今日的意義−結語にかえて

付表:モク採り関連年表(肥料藻採集実態の湖沼間比較/社会の変化と湖沼環境の変化)
★正誤表
掲載ページ/位置
(誤)
(正)
36ページ
表キャプション2行目
対象年間に
大正年間に
87ページ
5行目
丸太に石を縛り付けて重りとしたものを湖底に沈め,船で曳航する方法もとられた。(琵琶湖博物館, 中藤容子私信)
竹竿に石を縛り付けて重りとしたものを湖底に沈め,船で曳航する方法もとられたと聞く。
93ページ
7行目
現在の琵琶湖南湖における沈水植物群落の面積は32km,現存量は乾重量で4,160トンと推定されている(大塚ほか, 2004)。琵琶湖全体で南湖の2倍になると仮定すると(生嶋ら, 1962),乾重量で8,320トンになる。干拓で失われた内湖の面積は25kmあり,これに南湖の面積あたりの沈水植物現存量を代入すると,内湖での現存量は3,250トンになる。これらをあわせると乾重量で11,570トン,乾湿比8.7%(大塚ほか, 2004)で換算した湿重量は約130,000トンとなる。
現在の琵琶湖南湖における沈水植物群落の面積は32km,現存量は乾重量で7,100トンと推定されている(大塚ほか, 2004)。琵琶湖全体で南湖の2倍になると仮定すると(生嶋ら, 1962),乾重量で14,200トンになる。干拓で失われた内湖の面積は25kmあり,これに南湖の面積あたりの沈水植物現存量を代入すると,全内湖29kmでの現存量は3,770トンになる。これらをあわせると乾重量で17,970トン,乾湿比8.7%(大塚ほか, 2004)で換算した湿重量は約200,000トンとなる。
93ページ
17行目
内湖の現存量の推定値(湿重量)約130,000トンにほぼ近い。
琵琶湖の現存量の推定値(湿重量)約200,000トンの半分である。
93ページ
23行目
肥料藻採集がおこなわれていたと聞く。(琵琶湖博物館, 中藤容子私信)
肥料藻採集がおこなわれていたかもしれないと地元で聞く。
94ページ
5行目
ようやく 2005 年になってからであった。(琵琶湖博物館, 中藤容子私信)
ようやく平成3年(1991年)になってからであった。(平成3年4月1日公布「滋賀県漁業調整規則の一部を改正する規則」による)
115ページ

琵琶湖 使用器具
丸太
竹竿

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